遺言書とは
遺言書とは、遺言者の最終的な意思や希望を表したものです。
遺言書は、まさに死に直面した時にのこす「遺書」とは違います。
おもに財産の承継方法(ご自身の財産をどのように配偶者や子等に分けるのか)をご自身の意思で決めておくためのものです。
遺言書は、法律に定められた方式にしたがっていなければ有効とならず、また当然のことながらご自身の意思を表現することができなくなってしまうと遺言書を作成できないので、できるだけ元気なうちに作成されることが望ましいといえます。
満15歳以上の方であれば遺言書を作成することが可能です。
遺言書でできること
遺言書によって法的に実現できる事柄は法律で決められています。
おもなものとしては、
- 法定相続分と異なる相続分の指定
- 遺産分割の方法の指定
- 相続人以外の第三者への遺贈
などがあります。
法的効力はありませんが、家族への思いや感謝の気持ちなどを遺言書に書いておくことも、なんら差し支えありません。
遺言書の方式
遺言書は、法律によりその方式が定められていますが、大きく分けると、普通の方式と、普通の方式による遺言書では間に合わない緊急時のための特別の方式の2つがあります。
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自筆証書遺言
遺言者が、遺言の全文、日付及び氏名を自書し、これに押印することによって作成する遺言です。
必ず自書でなければならず、パソコンで作成したものや、代わりの誰かに書いてもらったものは無効となります。
ただし、自室証書遺言に相続財産の目録を添付するときは、その目録については自書する必要はありません。第三者がパソコンで作成してもよいですし、不動産については登記事項証明書(登記簿)を、預貯金については通帳の写しを添付することもできます。財産目録を添付する場合はすべてのページ(両面に財産の記載がある場合は両面とも)に遺言者が署名押印しなければなりません。また自筆で記載された遺言本文と同じ用紙に財産目録を印刷等することは認められません。
また、遺言の内容の訂正は、訂正箇所に署名押印するなど、法律の規定にのっとった方法により行う必要があります。
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公正証書遺言
証人2人以上の立会いのもと、公証人に遺言の内容を口頭で伝えること等により作成する遺言です。
未成年者、推定相続人や受遺者及びこれらの者の配偶者や直系血族等は証人にはなれません。
なお、言葉の不自由な方は通訳人を介して作成することが可能です。
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秘密証書遺言
遺言書を封筒に入れて封印し、これを公証人1人以上及び証人2人以上の前に提出すること等により作成する遺言です。
遺言の内容を公証人や証人に知られることがありません。
遺言の内容は代筆やパソコン作成でもかまいませんが、遺言者の署名押印が必要となります。
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死亡の危急に迫った者の遺言
病気等により死亡の危急に迫った方が、証人3人以上の立会いのもと、証人のうちの1人に遺言の内容を口頭で伝えること等により作成する遺言です。
遺言の日から20日以内に家庭裁判所における確認手続きをうけなければ無効となります。
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伝染病隔離者の遺言
伝染病による行政処分等のため交通を断たれた場所にいる方が、警察官1人と証人1人以上の立会いのもと作成する遺言です。
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在船者の遺言
船舶中にある方が、船長又は事務員1人及び証人2人以上の立会いのもと作成する遺言です。
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船舶遭難者の遺言
船舶が遭難した場合において、その船舶中にあって死亡の危急に迫った方が、証人2人以上の立会いのもと、口頭により作成する遺言です。
特別の方式による遺言書は、遺言者が普通の方式による遺言書を作成できるようになったときから6か月間生存したときは、無効となります。
公正証書遺言を除くすべての遺言書について、遺言書の保管者は、相続の開始を知った後遅滞なく、家庭裁判所における検認手続をうけければなりません。
また、封印のある遺言書は、家庭裁判所において相続人又はその代理人の立会いがなければ、開封することができません。
自筆証書遺言と公正証書遺言
遺言書の方式のうち一般によく知られているのは、自筆証書遺言と公正証書遺言です。
この2つの遺言書の違いを比較してみましょう。
(メリット)
- 思い立ったとき、いつでも作成できる。
- 費用がかからない。
- 内容を誰にも知られないよう作成できる。
(デメリット)
- 記載内容が不明確、形式の不備等により効力が認められないことがある。
- 紛失や偽造・改ざんのおそれがある。
(メリット)
- 形式不備等によりのちに無効となるリスクが少ない。
- 原本が公証役場にて保管されるため紛失等の心配がない。
(デメリット)
- 証人が必要。
- 費用や時間がかかる。
いずれの遺言書も、作成に際しては、当事務所など専門家に相談されることをおすすめします。